ひでコラム NO.4 【リハビリテーションを考える③】

〜命の終わりに立ち会えない医療職〜

医療現場で働く人は、多くの人が生と死に立ち会います。
医師も看護師も、介護士もレントゲン技師も、薬剤師も事務員も…
しかし、リハビリスタッフは、生には関わるけれど死にはほとんど立ち会わない。立ち会う必要性がない。
なぜなら、リハビリを受ける方は、生を活かす希望を持っている方が多いから。命が終わりそうな方は、リハビリを積極的には求めないから。

先月までは、そう決めつけていました。

私の訪問リハビリを受けて2年が経つ御利用者様に、癌がみつかりました。
『息子が後1年で出張から帰ってくるので、それまでは、私が家を守っていかなきゃね』
それが口癖でした。
日に日に身体は浮腫み、リハビリ中も意識が朦朧としている時間が増えてきました。
一緒にひ孫さんとリハビリをする事も、地域のイベントに参加する事も、大好きな韓国ドラマを観る事も、80年以上付き合いのある友人との食事会も、少しずつ出来なくなってきました。
歩けなくなり…座れなくなり…起き上がれなくなり…寝返りも一人ではできない…

リハビリ、必要なんだろうか?
私は、何をしたら良いのか・・・。

悩みました。

悩みながらも、笑顔でリハビリを提供し続けました。
少しでも、身体の痛みを、心の辛さを和らげたいと願いながら。

でも、答えがやっぱり分からない。
だから、相談してみました。

主治医や看護師、ケアマネジャーの方々に。

『もう、リハビリの出る幕じゃないよ』
って言われる覚悟をして。

何ができるのでしょうか?

『やりたい事、やれば良いんじゃない。利用者さんは、清村君を必要としてるんでしょ。だったら、最期まで関わっていきなよ!!』

リハビリ中、以前のような会話が蘇りました。時には、目頭があつくなる事もありました。でも、いま出来る事を、いま伝えたい思いを形にして関わりました。

そして、私がリハビリをした2日後でした。家族に見守られながら、静かに息を引き取ったそうです。

確かに、リハビリスタッフは、利用者様の死に立ち会わない。立ち会えないことが多い。
でも、生ばかりを追い求めていたあの頃より、死が全ての方に平等に訪れる事を知った今の方が、人間らしいリハビリができる気がします。

御利用者様には、生前、しっかりと『ありがとう』の気持ちを伝える事ができました。また、介護に携わっていた御家族様の方とも、思い出話しがたくさんできました。
そして今回は、他職種の方々の温かさを知った日々でもありました。

やっぱり、人は一人では生きていけないですね。

明日も陽はまた昇る。
いちリハビリスタッフとして、これからもできる事から一つ一つ、始めていきます!!

今回も最後まで読んで頂いた方、ありがとうございました。